パルステ!観劇レポーターより「チルドレン」レポート到着!

舞台「チルドレン」東京公演が明日9月12日(水)より世田谷パブリックシアターにていよいよ開幕します。

先週末行われた埼玉公演を、今回もスマホアプリ「パルステ!」のゴールド会員・シルバー会員の中から抽選で選ばれた観劇レポーターの皆さんにご覧いただきました。
そのご感想が早速届ききましたので、ご紹介いたします!


地震、津波、原発と難しい内容なのに一瞬で引き込まれる演技は流石です。笑いと怖さが一体化で目が離せませんでした。
地震被害を目の当たりにしている自分には何ができるのか、今更ながら考えさせられます。素晴らしい舞台をありがとうございました。

<お名前なし>


イギリス人の若い作家の作品とは…3.11の日本の原発事故を連想させます。登場人物3人だけのお芝居。皆それぞれ、ぴったりっていう感じのキャスティングでした。考えさせられるストーリーです。

<ドラゴン花 さん>


この舞台は翻訳劇ですが、見ていたら東日本大震災のことを思い出しました。ヘイゼル、ロビン、ローズ三人の会話は可笑しいだったり、一見矛盾な時もあるですが、後々すべてが成立したと思えてきます。生活そのもの、人生そのものだと思います。ユーモラスな会話を聞いて笑ったりしたが、ほぼ涙が止まりません。

ローズはなぜ原発に行く理由を説明した時のセリフとヘイゼルの反論を聞いて、一番つらくて、涙が込み上がってきました。懺悔、後悔、責任、後世子孫への愛、人間自身のエゴ、平穏な生活を送りたい欲望、様々な気持ちが劇場中に充満していました。
二人の言い分はどちらも正解だと思います。ローズ自身はがんにならなかったら、原発に行きたいのかも思ったりしていました。では、自分だったら、どう選択するかも考えはじめました。

観劇前に、もしかしたら、わかりにくいお芝居になるかもしれないと予想していましたが、完全に裏切られました。高畑さん、鶴見さん、若村さん三人の迫真な演技で、すごく理解できて、感情移入しやすかったです。観劇レポーターとして、このすごく考えさせられたお芝居を見ることができて、ありがとうございます。千秋楽はどんな進化になるかを、知りたくなりました。

< K さん >


皆様、素敵なレポートをありがとうございました!
思わず感想を述べずにはいられないという気持ちが、それぞれに伝わってきました。
皆様いただいた原文そのままでご紹介しております。

本作は、観た後にそれぞれが何かしらの思いを持ち帰られて、それを深く考えたり、共有したくなるタイプの作品のようです。
皆様は、何を受け取り、何を考えられるのでしょうか?ぜひ、劇場でお確かめいただけましたら幸いです。


「チルドレン」東京公演は9月26日(水)まで。その後は豊橋、大阪、高知、北九州、富山、宮城と全国を巡演して参ります。
各会場、沢山のご来場お待ちしております!

【ぴあ×パルコステージ特別企画】『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』尾上右近密着取材 vol.6】ゲネプロ レポート

現代劇に初挑戦する歌舞伎役者・尾上右近さんに密着してきたこの企画もついに最終回。開幕前日に行われた公開ゲネプロと囲み取材のレポートをお届けします。尾上右近という役者の、そしてこの『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル〜スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ〜』という作品の成長を目の当たりにすることができたゲネプロ。本番でのさらなる進化を、ぜひその目でお確かめください。

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また、今回は、登場人物のうち、コカイン中毒者が集まるサイトのメンバー、マデリーンを中心としたストーリーをご紹介。日本で生まれてアメリカに里子に出されたという過去を持つ彼女は、日本初上演となるこの作品の観客にとって、大いに親しみを感じさせる存在となるはずです。

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■STORY■

[オランウータン]というハンドルネームで、エリオット(尾上右近)の実母・オデッサ(篠井英介)が運営するサイトのユーザーとなっているマデリーン(村川絵梨)。ここしばらくログインがなく、仲間の[あみだクジ]ことウィルスキー(鈴木壮麻)も心配していたところ、久しぶりに登場した彼女は、今、日本にいるのだと打ち明ける。マデリーンは日本の釧路で生まれた日本人で、生後9日目に里子に出され、アメリカで育っていたのだ。そして、コカイン中毒から抜け出そうと里親にすべてをさらし、彼らから送られてきた片道航空券で日本へと飛び立ったマデリーン。だが、生みの親の居場所を突き止め、そこに向かおうとするも勇気が出ない。そんなとき助けを求めたのが[あみだクジ]だった。ふたりがオンラインの世界を出て現実につながろうとしていたその頃、アメリカでも、エリオットの育ての親が亡くなったことをきっかけに、彼の従姉のヤズミン(南沢奈央)、サイトの新メンバーである[ミネラルウォーター]ことジョン(葛山信吾)を巻き込みながら、エリオットとオデッサにも変化が起ころうとしていた。

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■公開ゲネプロ レポート■

エリオット(右近)と従姉のヤズミン(南沢)が生活しているリアルな世界と、エリオットの実母オデッサ(篠井)が管理している、薬物依存からの克服を目指す人々が集うオンラインの世界が、交錯しながら進んでいくこの物語。

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ゆるやかに傾斜した八百屋舞台には、[俳句ママ]ことオデッサの自宅ソファ、[あみだクジ]ことウィルスキー(鈴木)の会社デスク、[オランウータン]ことマデリーン(村川)がいる札幌のインターネットカフェの椅子が埋込み状態で配置されています。そこに、エリオットが働いているサンドウィッチショップや、ヤズミンの勤め先である大学の教室など、様々な装置が舞台袖から現れ、ふたつの世界は違和感なく切り替わっていきます。

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ログオンとログオフの音も効果的。俳優たちの身体表現を伴うチャット・ルームでの会話は彼らの心情をリアルに伝え、なかでも、プライドが高そうな[ミネラルウォーター]ことジョン(葛山)が新しく入ってきたときの[あみだクジ]と[オランウータン]のあからさまな冷ややかな態度は、観客も共感を覚えざるを得ないようなおかしみが漂ってきます。

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また、そんなユーザーたちを包む[俳句ママ]が、作品に温かさをもたらしてくれます。

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だが、リアルな世界ではオデッサも、さらにギスギスした人間関係にさらされてしまいます。息子のエリオットが、育ての親の死をきっかけに会いに来るのです。Photo_13

そこで見せる右近さんの芝居には圧倒されます。オデッサのコカイン中毒が原因で自分は見捨てられたのだと、タイトルにある“スプーン一杯の水”をめぐる話を告白するエリオット。オデッサを冷たくにらみつける瞳、その目に浮かぶ涙が、彼の激情を台詞以上に雄弁に語ります。

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さらには、気の置けないヤズミンとの会話で見せる豊かな表情や、イラク戦争で抱えたトラウマを象徴する幽霊(陰山泰)に対する慄きなど、初めての現代劇にもかかわらず、実に繊細に心を動かしていることが見てとれる右近さん。

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それに呼応する南沢さんの包容力がまた、どう生きていいのかわからなかったエリオットの背中を押していきます
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面白いのは、この物語の世界では最も爪弾きにされていた[ミネラルウォーター]が、息子に怒りをぶつけられたオデッサを支える存在となり、それとともにみんなが一歩を踏み出していくこと。どんなに弱くてもどうしようもなくても、誰もが誰かの力になり得るし、自分で自分を動かすことはできるのです。それぞれがどんな道を見出し、エリオットがどんな希望をつかむのか。彼らの一歩はきっと、観る側にも強い足跡を残すはずです。
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■囲み取材■

ゲネプロ終了後、キャスト7名が全員揃い、取材に応えました。
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まずは歌舞伎にはないゲネプロを経験した右近さん。「厳しい空気を感じ、精神状態は完全にオーバードーズでした(笑)。明日からの本番は、お稽古でみんなで作り上げたことを守りながら、そのときに起きる自分の感情を乗せてとにかく踏み出してみようという気持ちでやっていきたいと思います」。右近さんのその心境を聞いた村川さん。「普段堂々とされていて緊張とかしないんだろうなと思っていた右近さん……この現場では“けんけん”ってみんな呼んでるんですけど……けんけんが今日、『ヤバイ、吐きそう』って言ってたので、ちょっと安心できました(笑)」と笑わせました。

作品については、南沢さんが「読めば読むほど、『この台詞はどういう意味なんだろう』と謎が生まれてきて、みんなでディスカッションしながら理解を深めてきた作品です。それが実際に観てもらってどう伝わるのか、すごく楽しみ。人種も環境も違う登場人物が、最後には人とのつながりの温かさを感じていく。そんな普遍的なところがつながればいいなと思っています」とアピールします。葛山さんも「お客さんの反応に乗せられて自分たちもまた変わっていくと思います。どういうお芝居になるのか、本当に楽しみな作品です」と続け、陰山さんは「手強い脚本ですが、読んだときにこれは絶対面白くなるぞという予感がありました。また、僕の幽霊という役は、ちょっとずつ出てきて、実はスプーン一杯ずつ水を与える役ではないだろうかと思っているので、これからまだまだ深めていきたいと思っています」と真摯に話します。ネットの世界の住人を演じるうえで、「空間の取り方に苦しみ悩んだ」というのは鈴木さんです。「ネットと現実での人間の関わりというものがどんなふうに伝わっていくのか楽しみですし、僕の役も最後に現実の世界で人と関わる瞬間があって、そのとても愛おしいひとときを大事にしながら、みなさんと素敵な舞台を作っていきたい」と語りました。

そして、エリオットの実母オデッサ役を女形として演じる篠井さん。「演劇ならではの女形です。みなさんの想像力を掻き立てるように演じて、この母子の関係の、とても微妙な細やかな綾が伝わるといいなと思っています。たぶんみなさん、『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』って何のこっちゃという感じだと思いますが(笑)、その答えを確かめにぜひ劇場にいらしてください。内容は少々重いかもしれませんが、私たちのチームワークの良さと温かさがわんわんと出るはずですし、泣けますよ(笑)」と観客に向けて、やさしさとユーモアあふれる呼びかけをしました。

最後に右近さんが締めくくります。「現代劇の難しさは型がないことにあると感じています。歌舞伎には洗練された型があって、初役でも先輩から型を教わってその役として存在できますが、現代劇では自分で型を作ってそこに存在しなければいけない。それはまだ未完成だと思いますし、僕はもちろんのこと、第一線で活躍なさっている百戦錬磨の先輩方ももがきながら作ったお芝居ですので。千穐楽の大阪公演までもがき続けながら、みなさんと一緒に走り抜けたいと思っています」。

右近さんはこれまでも、大きな壁を力に変えてきました。この密着企画でも、緊張をバネにしていると何度も語ってくれました。ひとりの役者のその飛翔を目にするチャンスは、そうそうあるものではありません。皆さんにもその瞬間に立ち会っていただきたいです。

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「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」パルステ!会員の観劇レポートが到着!

現在、紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて、「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」東京公演が絶賛上演中です。

PARCO STAGEのスマホアプリ「パルステ!」では、ゴールドステージ・シルバーステージ会員の中から抽選で決定したお客様を観劇レポーターとしてご招待し、作品のご感想をお寄せいただく試みを行っております。
今回、「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」の観劇レポートが到着したましたので、会員の皆様だけに公開するのは勿体ない!と、特別にPARCO STAGE BLOGでもご紹介してみることにいたしました。ご承諾いただきました会員のお二人に心より感謝申し上げます。

既にご観劇済の方はご自身の感想と比べながら、また、まだご覧になっていない方は「このような観方もある」というご参考の一つとして、お読みいただけましたら幸いです。そしてご観劇後には、あなたご自身のご感想も、ブログやSNSで綴ってみていただけたらと思います。

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「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」初日拝見しました。
翻訳劇はちょっと苦手意識があり、最初はまくし立てるような台詞の多さにたじろぎましたが、気がつけば、どんどん話しに引き込まれていました。
重いテーマではありましたが、ラストではホロリとさせられ、後味の良いお芝居でした。
尾上右近丈、現代劇初挑戦とのことでしたが、何の違和感もありませんでした。エリオットの不安や苛立ち、凄く伝わってきました。これからのご活躍も期待しております!

(珊珊さん)


 まず、この作品での尾上右近さんの役柄がイラク戦争の帰還兵ということを知り、ああ、これはアメリカ映画などでお馴染みの、大義があったとは言え、自らの手で人を殺めてしまったことによるPTSD/トラウマの話だろうな。もしかすると、さらに踏み込んで戦争が残したものや命の尊さを問う作品になるんだろうなと勝手に思いながら観劇開始。

 しかし、そんな先入観は開演後すぐに崩壊。イラク戦争によるトラウマというのは登場人物の一人であるエリオットが抱えている問題に過ぎず、他の登場人物は、それぞれ別の問題(悩み)を抱えていた。ドラッグ(コカイン中毒)だ。彼/彼女たちは、エリオットの実母である篠井英介さん演じるオデッサ(ハンドルネーム:俳句ママ)が管理するサイトのチャットルームで繋がっていた。時に罵り合いながら、時に慰め合いながら。バーチャルな空間で、顔すら合わせないまま・・・。

 そんなバーチャル空間に新たな人物。薬物中毒に悩むジョン(ハンドルネーム:ミネラルウォーター)がアクセスしてきたことで、チャットルームでのやり取りは新展開を見せる。

 一方で、サブウエイで働くエリオットにも別の事件が起きる。育ての母であったジニー(オデッサの姉)の体調が急変し、急逝してしまうのだ。

 ここからはオデッサ(ハンドルネーム:俳句ママ)を中心に、オンライン上の人物(俳句ママ、ミネラルウォーター、あみだクジ、オランウータン)と現実世界で悩みながら生きている人物(エリオット、ヤズミン)の話が交錯し、それぞれがそれぞれの反応/行動を取ることになる。これ以上書くとネタバレし過ぎるので、あとは観劇してのお楽しみ。

・・・ということで、ネタバレにならない範囲の抽象的な表現で感想を。

 個人的に(勝手に曲解して)面白いなと思ったのは、第一幕は、

  Addiction,Addict(中毒)
 
 の話で進んでいたのが、第二幕の途中から、いつの間にか、

  Addicted To <e.g. You>(病みつき=愛情、夢中)
 
 の話に転がり始めたことだ。
 
 バーチャルな関係性を保っていた登場人物(俳句ママ、ミネラルウォーター、あみだクジ、オランウータン)は、この物語を通してリアルな現実と対峙することで、ネガティブな意味の「Addict」からポジティブな意味の「Addict」へと変容した。

 その触媒となったのは、リアルな世界で苦しんでいたエリオットとヤズミン。
この二人がジニー急逝を機に、これまで関わらないようにしていたオデッサ(俳句ママ)と会い、エリオットは昔から心の中に澱のように積もっていた自分の気持ちを吐露、一方のヤズミンは「赦す」ことで、以前よりは自分の心の闇が晴れ、次のステップへ進むキッカケとなった。

 メンタルケアでよく使われる「認知行動療法」。それは、ものごとの捉え方を変えてみることから始まる。よく採り上げられる例だが、「コップに水が半分入っている」状態を見て、ある人は「もう半分しか残ってない」と思うかもしれないが、ある人は「まだ半分も残っている」と思う。出来事・状況・対人関係といった「環境」は変えられなくても、自分自身の考え方(認知)や行動は変えられるのだ。

 この作品のタイトルは「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」。「たったスプーン一杯の水」と捉えるか、「スプーン目一杯の水」と捉えるか。生きていくために必要なものなんて、実はそんなに大層なものではないのかもしれない。


(twinkleoceanさん)

twinkleoceanさんのレポートは、こちらのnoteの記事でもお読みいただけるとのことです。


「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」当日券は毎公演開演の60分前より当日券を販売いたしております。
22日の東京公演千秋楽、8/4(土)の大阪大千秋楽まで、「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」応援のほど、どうぞ宜しくお願いいたします!

【ぴあ×パルコステージ特別企画】『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』尾上右近密着取材 vol.5】尾上右近×篠井英介対談

現代劇に初挑戦する歌舞伎役者・尾上右近さんに密着しているこの企画。第5回目は、右近さん演じるエリオットの実母・オデッサ役の篠井英介さんとの対談をお届けする。ふたりが語り合ったのは実は稽古初日。にもかかわらず、早くも打ち解けた穏やかな雰囲気がそこにはあった。それは、この作品の登場人物たちが、心の奥底にやさしさを持ち、人とつながろうとしているからこそ、生まれてくるものなのかもしれない。

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そして、今回は、その篠井さん演じるオデッサを中心としたストーリーを紹介。エリオットとオデッサの関係を知ると、今回の対談をさらに味わい深く読めるはず。もちろん観劇の際の感動もより大きくなるに違いない。

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■STORY■

オデッサ(篠井英介)はフィラデルフィアに住むプエルトリコ人。トイレ掃除婦の仕事の傍ら、ドラッグ中毒から立ち直ろうとする人々が集うチャット・ルームの管理人をしている。彼女自身も[俳句ママ]のハンドルネームを持ち、日本の俳句の形式で、ユーザーを勇気づける言葉を発信。さらには、チャットを飛び出してユーザーと会い、施設を紹介するなどのケアも行っていた。彼女をそこまで掻き立てるのは、自身も中毒者だったからだ。しかも、その中毒のために、ウィルス性胃炎にかかったふたりの子どものうち、娘を死なせた過去がある。5分ごとにスプーン一杯の水を与えなければならなかったのに、子どもたちを放置して失踪してしまったのである。かろうじて生き残った長男のエリオット(尾上右近)は、オデッサの姉ジニーに育てられることになったが、やがてジニーががんで亡くった。葬儀用の花代を徴収しようと、エリオットがいとこのヤズミン(南沢奈央)とともに訪ねてくるも、ユーザーのためにお金を使い果たして無一文の彼女には、パソコンを手放すことしかできず、そのためにチャットができなくなった。そして、息子と会ったことで過去が甦り、6年ぶりにコカインに手を出してしまったオデッサ。オーヴァードーズで倒れているところをエリオットとヤズミンに発見され、新米ユーザーの[ミネラルウォーター]ことジョン(葛山信吾)に介抱されることになる。

 

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■尾上右近×篠井英介 対談■

 

  • 生々しく生きているエリオット

 

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右近 今日の本読みは、最初、かなり緊張してガチガチだったんですけど、みなさんの声を聞いているとイメージが膨らんできて、途中からすごく楽しくなってきました(笑)。

篠井 右近さんもフレッシュで素敵でした。演じる側としてはとても難しい本なのに、自分の手に少し入ってるような感じがして、聞いていて楽しかった。

右近 現代劇が初めての僕としては、何がどのように難しいのかあまりわかってないんですけど。篠井さんをはじめみなさんが、『これは難しい』とおっしゃるということは、エライことに挑んでしまったのかもしれないなと思いつつ(笑)、でも、その分、ワクワクもしています。

篠井 演じる側にとってこの本が大変だというひとつは、それぞれ抱えているものは大きいんだけど、みんな本心を素直に出さなくて、ひねくれたものの言い方しかしないところなんですよね。エリオットとオデッサもそうじゃない? オデッサにとってエリオットは、娘を亡くしてしまったから唯一の子どもで、すごく愛しているのにわだかまりがあるし、エリオットも母の愛を望んでいるのに、オデッサを母親と認めたくない。そんなふうにほかの登場人物もみんなどこか屈折しているでしょ。だけど、ただのイヤな人たちじゃなくて愛おしい人間たちっていうふうに見えなきゃいけないし、かといって、『本当はいい人なんです!』なんて出しちゃうのも変だし面白くない。だからそこが、僕たちがこれから作っていくうえでは大変で難しくて、でもやりがいもあるっていうところになるなと思うんですね。

右近 ただ、今日の時点で、文字で読むのとみなさんの声で聞くのとでは全然ニュアンスが違うなっていうことは感じました。たとえば、オデッサが、姉のジニーが亡くなったことを新聞の死亡記事で知ったところとか、ジニーへの愛情とか家族の絆みたいなものをすごく感じたんです。それを観客は知ってるのにエリオットは確認できない。だから、そのもどかしさや根底にある人の気持ちの温かさを、観る方が感じられるように演じられたらいいのかなというようなことを思いましたね。

篠井 たぶんお客様はエリオットを見ながらこのお芝居に入っていくんだろうなと、今日聞いてて思いました。あとの人たちはもう、ネット上のチャットで、意地悪なことや訳のわからないことを文章で書いているから(笑)、なかなか本心がつかみにくいけど、エリオットがいちばん、ありようとして、生々しく生きている人間っていう感じがしたし。それがすばらしいと思いました。

右近 うれしいです。でも、ホントそうですね。ナマでしゃべるのと文字にするのとでは伝わり方とか速度が違うっていうことも、ひとつこのお芝居のキーになるのかなとは思いました。文字にすると言っても手紙とネットでは全然違いますし。思わぬところで人を傷つけることもあるっていう、現代のネット社会のありさまも、この芝居が提示していることなのかなと思います。

 

  • 歌舞伎役者の持つ力

 

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右近 最初に篠井さんがお母さん役だと聞いたときはすごくうれしかったです。男だけでお芝居するのが常識のなかで育ってきた僕としては、やはり、女形さんがいらっしゃるのは安心できるというか。自分の助けにさせていただけるだろうなと思ったんですね。

篠井 でも、僕としては逆に、せっかく現代劇で女性と芝居できるのに、『また女形かよ』と(笑)、そう思われてるんじゃないかなと心配してたんです。だから、そんなふうに言っていただけるのは本当にうれしいですし。僕はやはり本業が女形だと思ってきましたからね。現代劇で女優さんに混じって女の役をやって、それでも不自然じゃなく、その作品の役に立ちたいと、そんな思いでずっと何十年もやってきたので。今回も、ちゃんとやれないと、今までお前は何をしてきたんだっていうことになるなと思ってるんですけど。

右近 僕、篠井さんがスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』の名古屋公演を観に来てくださったとき、すごく緊張したんです。あの公演では、主人公のルフィとハンコックという女帝の二役を早替りでさせていただいてたんですけど、漫画が原作の現代的な歌舞伎なので、古典の女形とはまた違うスタンスというか、より自然な女形を演じなければならないという一面もあったので、現代女形の篠井さんが観てくださると思うと、自分に足りていないものにすごく敏感になってしまって。デフォルメという意味では、古典よりも守ってくれるものが断然少ないですから。

篠井 そういう意味では、ああいう新作の現代的なものをやればやるほど、その人の持ってるものが出るんですよね。だから、右近さんを拝見して、品格と実力が感じられたのがとてもすばらしいなと思って。古典がきちんとできる人だから、こういう現代的な作品もできるんだなと思いました。

右近 自分がそんなところまでいけてるかどうかわからないですけど……。でも、最高の褒め言葉をいただきました。

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篠井 本当にそう思います。だから、エリオットという現代の青年を演じても、存在感というか肝の据わり方が違うと思うんですよね。そもそも歌舞伎の役者さんたちって、現代劇の役者と違って、365日のうち下手したら300日ぐらいは舞台に立っている人たちでしょう。身体がもう舞台で生きるっていうふうにできちゃってるんですから、正直言って僕ら敵わないですよね。舞台に出てくるだけで、そこにいるだけで、何かこう大きな力がある。それを読み合わせだけでも感じました。身体に染み付いているものはすごいと思います。

右近 そういうものなんですね……。

篠井 ご本人は緊張してドキドキしてますっておっしゃってるけど、『えい!』ってやるしかない、物怖じのなさ、潔さというものをすでにお持ちになっているんですよね。だって、これまでも、何かやるときは、『自分しか頼るものがない』『僕は僕を信じるしかない』と思ってやってこられたでしょうし。それはかけがえのない力だと思います。

右近 確かに、もともと僕の性格としては内気でシャイで緊張しいなので、何かやるときはいつも、その反動でいくっていう感じなんです。最も顕著なのが今回で、ある意味、オーヴァードーズを起こしてるようなものなんですけど(笑)。でも、そこで萎縮しないで、最初からきれいな盆栽になろうとせずに伸び放題に伸びるということがまず僕のやるべきことだと思っているので。演出のG2さんはじめみなさんに、整えてもらえたらいいなと思っているんです。

 

  • 役は関係で作られる

 

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篠井 右近さんがもともとは内気な性格なんだというのは、とてもエリオット的ですよね。エリオットも本当にナイーブで、そんな人がイラク戦争に行くことになって人を殺してしまうという普通じゃない経験をしたんだから、鎮痛剤中毒になったというのも、人間の痛みとしてとてもわかりますよね。

右近 繊細さゆえですよね。

篠井 そうだと思います。ピュアでナイーブだから、お母さんに対しても、屈折した気持ちはありつつ、愛おしいとも思うし、頼りにしたいとも思うし、守ってあげたいとも思うし、いろんな複雑な思いを持っている。そこは右近さんがもともと持っているやさしさとかナイーブさと重なりますよね。

右近 リンクする部分はあるなと、最初に本を読んだときから思っていました。

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篠井 だから、すばらしいキャスティングなんだと思います。

右近 エリオットという役に選んでいただいたのかもしれません。これからのお稽古で、強くそう思えるようにしていきたいですし、エリオットの内面をきちんと表現できるように精進していきたいですね。みなさんの台詞を聞いていると、自分の内面を打ち明ける瞬間に絶妙の間合いがあって、すごく勉強になりました。そこまでの自分の心を整理というものがこういう間として生まれるんだな、こうやってお芝居をお作りになるんだなって。

篠井 僕も、みんな必死で自分の役と向き合ってきたんだなと思いました。みんなのお芝居を聞いてなるほどと思ったこともたくさんありましたね。やっぱり、自分がこういうふうに演じようと思っていても、相手がどう出てくるかで変わっていく。そして、お客様はそのふたりの間に生まれる関係を観ているわけだから、結局、相手役さんがどういうふうに自分と接してくれるかで、自分の役は形作られていくんですよね。だから、そういう意味で、おー、みんな初日からけっこうやってきたなと(笑)。

右近 確かに僕も、従姉のヤズミンに乗っかっていく感じがありました。隣同士に座らせていただいて、これからこの距離がどんどん縮まっていくのかと、それも楽しみになりましたね。初めてお会いしてこんな近い役を演じるなんて、すごく不思議な感覚ですけど。

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篠井 歌舞伎の世界だと、だいたいみんな親戚だからね。お互いにこんな小ちゃいときから知ってるぞって(笑)。

右近 はい。だいたいみんなのことわかってるぞって(笑)。だから、役の関係性としての距離感も最初からおおよそのところは作れるんですけど、今回は初めましてですから。自分からも歩み寄っていかなきゃいけないっていうのは、新鮮で楽しみです。今日も、いつ話しかけたらいいんだろうと思いながら南沢さんに話しかけることができたので、今日だけでかなり鍛えられた気がします(笑)。

篠井 もうね、行け行けって感じです(笑)。演出のG2さんもとてもやさしくて開放的で決めつけたりしない方なので、言いたいこと言って、聞きたいこと聞けばいいだろうし。僕なんかはもう何度もご一緒していることもあって、まず提示してみて、よければ何も言わないだろうし、何かあれば言うだろうし、と思ってやっていますけど。

右近 僕は基本的には、歌舞伎では自分で決めていく習慣があるので、それとは逆に、G2さんとお話しながら進めていけたらなと思っています。そこでいろんなことを提案できるように、自分のなかでいくつかパターンを考えてしておきたいなと。

篠井 右近さんは右近さんのやりようでやっていけば大丈夫。

右近 そこらへんは自由なんですね。

篠井 自由、自由。リラックスしてやればいいと思いますよ。

右近 じゃあって言うのも変ですが、まずご飯に連れて行ってください(笑)。

篠井 そうそう、そういう親睦も大事。おいしいもの食べに行きましょう。

右近 エリオットとオデッサの、台詞の裏にある愛情深いつながりを作るためにも(笑)、ぜひお願いします!

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【ぴあ×パルコステージ特別企画『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』尾上右近密着取材vol.4】稽古場レポート

現代劇に初挑戦する歌舞伎役者・尾上右近さんへの密着企画もいよいよ大詰め。第4回目となる今回は、立ち稽古の模様をレポートします。目撃したのは、右近さん演じるエリオットが、いとこのヤズミン(南沢奈央)とともに実母のオデッサ(篠井英介)のもとを訪れる大事なシーン。そこに居合わせたジョン(葛山信吾)も巻き込んで、おかしくて哀しくて愛おしい場面が立ち上がっていきました。

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そして、第4回目のあらすじでは、稽古に登場したジョンについて紹介します。オデッサが運営するコカイン中毒者が集まるサイトに新しく現れ、みんなから鼻持ちならないと思われた人物が、いかに人々とつながっていくか。誰もが孤独感を感じながら生きている現代に、希望をもたらします。002


■STORY■

エリオット(尾上右近)の実母であるオデッサ(篠井英介)は、コカイン中毒から立ち直ろうとする人々が集うサイトを運営していた。そのチャット・ルームに、[ミネラルウォーター]というハンドルネームを持つジョン(葛山信吾)が現れた。41歳、白人。コンピューター・プログラマーとして起業した会社を最高潮のときに売却して莫大な利益を得、次に入社した会社も退社したが、金と時間は持て余すほどあるという。なのにいつのまにかコカインに手を出していたジョン。救いを求めてチャットに入るも、その恵まれた環境や、プライドの高さが伺える投稿が、もともとチャット・ルームにいた[オランウータン]ことマデリーン(村川絵梨)や[あみだクジ]ことウィルスキー(鈴木壮麻)には受け入れてもらえない。唯一誠実な言葉をかけてくれたオデッサを呼び出し、ジョンはチャットでは言えなかったことを告白する。そんなジョンを、オデッサもまた信頼したのだろう。息子と会って過去の罪が甦り、6年ぶりにコカインを吸って入院したオデッサは、緊急連絡先にジョンを指定した。オデッサの介抱を任されたジョンは、彼女の力となることで、自分自身も前を向いて歩いて行こうと決意する。

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■稽古場レポート■

物語の主人公であるエリオット(尾上右近)は、イラク戦争で負傷して帰還し、今はサンドウイッチショップのサブウェイで働きながら俳優を目指している青年。ある日育ての親である伯母のジニーが亡くなったことで、彼の人生に変化が訪れようとしていました。その始まりとなるのが、これから繰り広げられる場面です。

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舞台はフィラデルフィアのとある食堂。ハンドルネーム[ミネラルウォーター]ことジョン(葛山信吾)が、入ったばかりのサイトの運営者であるオデッサ(篠井英介)をここに呼び出していました。自身のコカイン中毒について何か相談があってのことに違いないのだが、プライドの高い彼はなかなか切り出せない様子。それを承知したうえで何とか力になろうとするオデッサ。そこへやってきたのが、エリオットと、彼が頼りにしているいとこのヤズミン(南沢奈央)です。ふたりがオデッサを訪ねたのは、オデッサの姉でありエリオットの育ての親であるジニーの葬儀の花代を、オデッサに払ってもらうためでした。しかし、お金などないと突っぱねるオデッサ。その険悪な空気に耐えかねたのか、自分のお金を出そうとするジョン。だがそれが、エリオットをさらにムカつかせてしまいます。何しろ、この目の前にいるコカイン中毒者のためには何だってしようとするオデッサは、息子の自分のことは放ったらかしにしてきたのです。エリオットはつい、ジョンの前で、かつてオデッサが自分の娘を放置して死なせたことを暴露し、長年募らせてきた思いをオデッサにぶつけてしまいます。そんなエリオットをなだめるかのように、そしてオデッサの心を動かすかのように、やさしかったオデッサの思い出を語るヤズミン。それを聞き終えたオデッサは、自分のパソコンを売って花代にしてほしいと言い置いて出て行くのでした。

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そこまで一気に通したあとは、演出のG2さんの出番です。少々手厳しい言葉も飛び出しました。この場面で起きているのは、もっとギスギスとしたぶつかり合いなのだというG2さん。ジョンはもっと高飛車にオデッサを見下す感じがあっていい。エリオットはもっとキツくオデッサに当たっていい。その母子の罵り合いの間に入っておろおろするヤズミンと、事情がよくわからずにお金を出そうとするジョンのおかしさも、そこに生まれるというわけです。そして、そんな修羅場に見え隠れするのは、エリオットとオデッサが抱えてきた哀しみとすれ違う親子の愛情。こんなふうに傷つけ合わなければ前に進むことができない彼らに、自分自身の人生の痛みも重なっていくのではないでしょうか。

休憩をはさんで再び同じ場面を繰り返します。エリオット役の右近さんは、先ほどとはまったく違う動きを見せ始めました。立ったままオデッサを責め、ジョンにもグッと近づき、苛立ちがよりクリアになっていきます。

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この場面にヒリヒリとした緊張感があればあるほど、それぞれがのちに見つけ出す希望も際立つはず。私たちも感情のうねりを直に感じ、ともに清々しいラストを迎えられるに違いありません。

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【ぴあ×パルコステージ特別企画『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』尾上右近密着取材vol.3】顔合わせ&本読みレポート

現代劇に初挑戦する歌舞伎役者・尾上右近さんへの密着企画の第3回目。いよいよ始まった稽古初日の右近さんの姿をお届けします。

 

その前に、ストーリーをおさらいしてみましょう。第3回目は、右近さん演じるエリオットの実母が管理するサイトに集うウィルスキーを中心に紹介。物語がさらに興味深くなるはず?


STORY

ウィルスキー(鈴木壮麻)は、アフリカ系米国人でロスアンゼルスに住む国税局の職員。[あみだクジ]というハンドルネームで、ドラッグ依存から抜け出そうとしている人々が集うサイトに入っている。コカイン中毒に陥ってからというもの、息子とは10年会っていない。同じサイトの住人である[オランウータン]ことマデリーン(村川絵梨)との語らいがその孤独を救っている。新参者の[ミネラルウォーター]ことジョン(葛山信吾)にはその恵まれた境遇ゆえに警戒心を持っているが、サイトの管理人である[俳句ママ]ことオデッサ(篠井英介)になだめられたりしている。自身もコカイン中毒の過去を持つオデッサは、そのとき娘を死なせてしまっていた。生き残った息子のエリオット(尾上右近)は伯母に育てられ、イラク戦争で足を負傷して帰還していた。その育ての母が亡くなり、エリオットが従姉のヤズミン(南沢奈央)とともにオデッサを訪ねたことをきっかけに、サイトの住人たちにもリアルな世界での変化が起き、ウィルスキーも思わぬ行動を起こすことになる。


 顔合わせ&本読みレポート

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6月初旬。稽古の初日は、キャストとスタッフが揃う顔合わせと、本読みが行われました。右近さんが挑む『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』は、2012年にピューリッツァー賞戯曲部門を受賞し、これが日本初上演となる作品です。初めて触れる世界であるという点では、全員が同じように緊張感を持って稽古場に臨んでいるように感じられます。なかでも、現代劇の稽古という場に初めて足を踏み入れる右近さんのそれは、人一倍ではなかったでしょうか。それでも、その挨拶は堂々たるもの。

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上演台本と演出を手がけるG2さんが「これまでミュージカルの翻訳はやってきましたが、ストレートプレイを翻訳したのは生まれて初めてです。新人ですのでよろしくお願いします」と笑わせたあと、それを受けて「僕こそ新人です」と語り始めた右近さん。

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「何もわからないことばかりなので、みなさんに教えていただけたらと思います。歌舞伎の初舞台を踏んでから19年。19年目の新人です。G2さんをはじめみなさまのお力をお借りして、生き恥をさらしながらいいお芝居をさせていただけたらと思っています」という言葉に、まさに今の自分のすべてを注ぎ込もうとする熱意が表れていました。

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続いて、実母のオデッサを演じる篠井英介さん、従姉のヤズミン役の南沢奈央さん、オデッサが管理する薬物依存のサイトの住人であるジョン役の葛山信吾さん、ウィルスキー役の鈴木壮麻さん、マデリーン役の村川絵梨さん、そして、亡霊をはじめ何役も演じる陰山泰さんが、それぞれユーモアを交えながら挨拶。

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G2さんと何度か仕事している人も、しっかりキャリアを積んできた人も、一様に、“わからないところはみんなで探りながら作っていきたい”という思いをのぞかせます。聞いている右近さんの表情もどんどんほぐれていきます。休憩中には、一緒の場面が多い南沢さんに自ら声をかける右近さんの姿がありました。

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休憩後、「今日はあえて解説せず、止めることもしないで読んでもらおうと思います」というG2さんの言葉から、本読みが始まりました。

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G2さんには、理屈で考えたものではなく、稽古を重ねることで見えてくるものを大事にしたいという思いがあるようです。イラク戦争、薬物中毒、ネット社会と、題材になっているのは社会的なテーマではありますが、登場人物がそれを大仰に語ることはありません。それぞれに自分の思いや問題を語っているだけです。「なのに、最後には明日への勇気が湧いてくるのはなぜなのか。それぞれが台詞を交わしていくことで、見つかるのではないか」というわけです。ただしひとつだけと、日本では馴染みのないコカインについての解説をしたG2さん。快楽物質であるドーパミンが、普通時を100とするならば、コカインを使用すると350になるといいます。中毒性が想像できます。

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 しかし、キャストが台詞を口にしはじめると、その深刻さよりも、G2さんの言葉通り、明るい希望のようなもののほうが強く浮かび上がります。きっとそれは、ここから抜け出したい、変わりたいという熱望が根底にあることを、役者たちが感じさせてくれるからでしょう。ことに右近さんが、エリオットというひとりの若者として発する台詞は、何とも軽やかで心地よい。イラク戦争で負傷していても、実母にネグレクトを受けて育っていても、とにかく生きようとしていることが伝わってくるのです。印象的だったのは第一声の透き通った響き。そこにはもちろん、歌舞伎で培われた発声も活かされているはずです。その技術と等身大でぶつかっていく演技が、どんなエリオットを、どんな希望の世界を作り上げるのか。楽しみが増してきました。

「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル ~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~」はいよいよ一週間後の7月6日(金)、東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて開幕!どうぞご期待ください!

【ぴあ×パルコステージ特別企画『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』尾上右近密着取材:番外編】市川猿之助×尾上右近 対談

歌舞伎も現代劇も、
大事なのは観る方に喜んでもらうこと

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現代劇に初挑戦することになった尾上右近さんを応援すべく、
市川猿之助さんが稽古場に駆けつけてくれました。
スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』の若手公演に、
その力を見込んで右近さんを抜擢した猿之助さん。
対談で発せられた猿之助さんの言葉に、
右近さんは大いに力づけられたようです。


■歌舞伎と現代劇の違い

 右近 この『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』で現代劇に初めて挑戦させていただくことになったのは、猿之助のお兄さんにいち早くご報告しました。もともと、「現代劇もやれたらいいね」っていうことを言ってくださっていたので、「ついにやることになりました」と。

猿之助 やっぱり、歌舞伎以外のお芝居をやることで、いろいろな経験が積めるからね。それが歌舞伎役者にとってプラスになるかどうかはわからないけれど。自分の人生が豊かになるという意味では、非常にいい機会になると思うんですよ。

右近 ご報告したときも、僕という人間自体がどうなるのかを楽しみにしてくださってるんだなということが伝わってきました。とくに、僕がけっこうテンパる性格だというのは重々ご承知なので、それを含めて「どうなるかねぇ」って(笑)。

猿之助 そう。そんなふうには見えないけど、すごく緊張するし、すぐ余裕がなくなっていっぱいいっぱいになっちゃうからね。

右近 そういう姿を、いつもいつも楽しそうに見守ってくださっていて。それが僕としてはうれしいんです。

猿之助 だってやっぱり、余裕でできる範囲のことをやっていたってつまらないでしょ。僕だって、自分の許容量以上のことを与えてもらって成長してこられたんですから。だから、『ワンピース』でも、「麦わらの挑戦」という若手公演の回を設けて、主人公のルフィをはじめ、僕がやっている複数の役をダブルでやってもらったんですよ。

右近 まさかダブルキャストでさせていただけるなんて、思ってもみませんでした。

猿之助 右近くんにやってもらうことにしたのは、初演の『ワンピース』(’15〜’16年)の稽古で、演出をしている僕の代わりに何人かに演じてもらっていたときに、右近くんがいちばんどの役も平均点が取れていたからなんですね。複数の役を演じる場合、どれかが突出してたらダメで、どれも平均点が取れなきゃいけないんです。

右近 ちゃんと取れてたんですか!? いや、僕はあのお稽古で初めて早替りをさせてもらって、上手くいってなかったと思ってたので、ちょっとびっくりしました。“貼り眉毛”の位置もズレまくっていましたし(笑)。

猿之助 まさしくテンパってた(笑)。

右近 はい(笑)。こういうことをやってみたいと憧れてはいたんですけど、見るのとやるのとでは大違いで。追われちゃうと役の違いを見せる余裕なんてまったくなくなりますし。だから、ちゃんと平均点が取れてたと今お聞きして、すごくうれしいです。

猿之助 だから、再演の東京公演で、怪我をした僕の代わりを勤めてくれたときも、心配はありませんでした。というより、やらなければならなくなったら役者はやりますからね。そして、お客さんにも入っていただけた。そこがよかったなと思っています。

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右近 猿之助のお兄さんの代わりを勤めさせていただくことになったときは、やはり、いろんなことを考えました。最終的には考えてもしょうがない、無心でやるしかないなという結論には至ったんですが。とにかくショッキングな出来事だったので、みんなが同じようにショックを受けているなかで、その真ん中に自分が立たなきゃいけないという責任の重大さがあり。あと、お兄さんがおっしゃったように、きっと興行的なことを心配なさるだろうから、空席が目立ってるなんていう噂が耳に入ったら申し訳ないと思って。それが、頑張り以上の頑張りが自分のなかで出た要因だったかもしれないなと思います。

猿之助 ま、まだまだこれからも試練はあると思いますから、どんどん傷ついていけばいいんじゃないかなと思いますよ(笑)。こうやって現代劇に挑戦したりしながらね。僕だって、『狭き門より入れ』(’09年)で初めて現代劇をやったときはもう、勝手が違いすぎて、緊張の毎日でしたから。

右近 僕も拝見しましたけど、お兄さんでも緊張なさったんですね。

猿之助 そう。芝居という一点では歌舞伎と同じだけれども、稽古の進め方から、本番の舞台の幕のあるなしまで、何もかもが違ってましたからね。僕らはだいたい、出の直前までしゃべってて、チョンと鳴って幕が開くぐらいで気持ちを持っていくでしょ。ところが現代劇は最初から幕が開いていてお客さんが見えてるんですよ。ちゃんとした境目がない。だから、どうやって本番に向けてのテンションを作ったらいいか、なかなか慣れなかったんですね。また、僕ら歌舞伎俳優は、常日頃からずっと一緒にいるから、ちょっと台詞がわからなくなっても、あうんの呼吸でフォローし合えたりするでしょ(笑)。初めましての相手の呼吸を1ヶ月ぐらいの稽古だけでつかむなんて、難しいことですよ。

右近 そうですね。僕も今、そこがいちばん歌舞伎と違うところだなというのを実感しています。初めてお会いした方々と、とても近しい距離の役を演じるというその感覚が、本当に新鮮で不思議で。だから、現代劇に関わることで歌舞伎の仕組みを感じたりするのが面白いなと思いますし。当たり前だと思っていたことも歌舞伎界の常識でしかなかったんだなっていうことに気づかされたりもしています。お芝居についても、まず動き方から歌舞伎とは違うので、戸惑いがあって。立ち稽古が始まったばかりのときは、従姉役の南沢奈央さんの隣に並んでずっとしゃべっちゃって、演出のG2さんに、「漫才してるみたいに見える」って言われてしまいました(笑)。相手との距離感も、歌舞伎では近くでやりとりすることが少ないので、ちょっとつかみづらいところがあります。

猿之助 そこはもう、周りのいいお手本を見て真似するところから始めるしかないよね。僕も浅野和之さんや手塚とおるさんを見て学びましたから。そしてあとは、自分は歌舞伎役者だって開き直る。だって、歌舞伎役者を呼んだっていうことは、現代劇の役者にはない個性を求めているわけだから。もちろん独りよがりではいけないけれども、譲れないところは譲らないほうがいいと思うんですよね。自分が何のために呼ばれたのか。そのなかで果たせる自分の役割を探さないと。

右近 確かにそうですね。いつでも現代劇の役者を呼んでこられるんだよっていうことですもんね。

猿之助 今から取り替えられちゃったりして(笑)。

右近 危ない危ない(笑)。でも、それは本当に、猿之助のお兄さんらしい言葉だなと思いますし、まだまだ模索中のなかで、お守りのような言葉をいただけたなと思います。

 


■共感を見つけて演じる

 

猿之助 僕はシェイクスピアもさせていただきましたけど、翻訳劇って、上手く作れば面白くなると思うんです。考え方や文化が違うんだから、そのままやってもやはり面白くない。そこをいかに日本人にも伝わるようにするか。細部にこだわらず、その作品が持つ原点にある面白さを表現していく。そうすると、日本人が外国人を演じて「マーク」なんて呼ばれている違和感も(笑)、感じさせないくらい洒落たものになると思いますし。今回の演出家のG2さんは、僕も一度ご一緒しましたけど、そういう洒落た考えをなさる方だから、面白い舞台になるんじゃないでしょうか。

右近 翻訳っていうのは、言葉だけじゃないっていうことなんでしょうね。

猿之助 そうそう。その作品が何を言いたいのかという芯を翻訳していく。

右近 『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』の場合は、作品のなかにシビアなテーマがある社会派の作品ではあるんですけど。でも、その翻訳するという意味では、僕もまず、自分が演じるエリオットという役と歳が近いということで捉えてみると、感覚としてすごく主観的に共感できる部分があったんです。若さゆえに抱いている悩みとか戸惑いがあるというところとか。しかも、問題を抱えてはいても、若いときってそれを出さずに笑って日々を過ごしたいっていうところがあると思うんです。笑ってごまかしてるからこそ悲しいみたいなことってあると思いますし。なので、エリオットを演じるうえでも、笑っちゃえる感じがあるといいなと、今なんとなく思っていて。前向きに生きようとしている感じが出ればいいなと思っています。

猿之助 主人公だけじゃなく、みんなそれぞれが問題を抱えているんでしょう。魅力的な役者さんが揃っているから面白くなりそうですね。篠井英介さんが女方としてお母さんを演じるっていうのも面白い。

右近 篠井さん、本当にお母さんのような包容力を感じるんです。

猿之助 立ち稽古が始まったばかりだそうですけど、たとえば立ち位置なんかも、ああでもないこうでもないと試行錯誤しながら決めていくでしょ。で、面白いなと思うのは、最終的に決まったそれが、歌舞伎でやっている立ち位置だったりすることなんです。歌舞伎の場合は昔から決まっていて、僕らは最初からポンとそこに立つ。でも、なぜその位置がいいのかとか、そこに決まった過程を知らない。だから、現代劇の稽古は、それを知ることができる時間でもあるんですよね。

右近 あーなるほど! 確かにその理由を知らずに立っていました。

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猿之助 そう。やってはいるけど、理由を説明しろと言われてもできない。そこを理論的に導いていけるのが面白いと思うんです。といっても、考えるのは演出家で、演出家の言う通りにやっていれば自然に知ることができるからラクなんだけどね(笑)。いや、というのは冗談としても、本当に、まず言われた通りにやってみることが大事だと思いますよ。そこから見えてくるものが必ずあるから。

右近 はい。お兄さんは稽古中に戸惑ったことはありましたか?

猿之助 何回も同じ場面を繰り返すこと。明日やればいいじゃんって思うんだけどしつこいんだよ(笑)。あとね、これは本番の話だけど、僕らは化粧しながら役の気持ちを作るでしょ。それが現代劇だと10秒ぐらいで準備が終わっちゃうから、気持ちをどこで作るかだよね。頭もカツラがかぶれないから自分で整えなきゃいけなくて面倒くさいし(笑)。現代劇の人はおしろい塗るのを面倒くさいと思うから逆なんだけど、自分の身だしなみで舞台へ出て行かなきゃいけないのは大変ですよ。

右近 ましてや僕の衣裳はポロシャツなので、より日常的ですからね。

猿之助 サブウェイで働いてる役なんでしょ。どうなるんだろう。楽しみだな。

右近 注文を受けるシーンもあるんです。

猿之助 器用に見えるけど、実は不器用だからね。

右近 本当にパッとはできないんです。で、できないことに自分で戸惑う(笑)。

猿之助 だから、見えないところでコツコツ稽古してるんだろうなと思います。もう初日はドキドキだろうな。頑張って(笑)。

右近 はい。最初にお兄さんが、いろんな経験をすることは人として豊かになるとおっしゃってましたけど、僕も今つくづくそう思っているんです。歌舞伎役者と清元を両立することも、清元が歌舞伎の何に役立つかわからないし、役者をすることが清元の何に役立つかまったくわからないけど、両方やることが自分の人生に広がりがあると思うからやらせてもらっているわけで。現代劇をやることも、その意味を求められるとわからないですけど、ただただ自分の広がりがほしいという気持ちだけなんですね。

猿之助 で、実際、人間が豊かになったからって、それが芝居にどう影響するかもわからないしね。でも、きっと観るほうの目が変わるんだと思いますよ。清元で声を出してるから台詞もよくなったわねとか、現代劇に出て芝居が上手くなったわねとか、観る人が勝手に想像してくれる。それはある意味、役者としての強みになるんじゃないでしょうか。

右近 先ほど、芝居という一点では歌舞伎も現代劇も同じともおっしゃっていましたが、その共通項って何だと思われます?

猿之助 お客さんに喜んでもらう、感動してもらうっていうことでしょうね。お見せするものの形は違うけれども、お金を払って観に来ていただくことは同じなので。美術が美しかったとか、音楽がよかったとか、俳優さんが魅力的だったとか、何かひとついいところがあって、お金払って観に来てよかった、楽しかった、また来ようと思ってもらえたらいいと思うんです。僕は伯父の(二代目・市川)猿翁から、どんな作品でも客が入れば勝ち、入らなければ負け、と教わって育ってきましたからなおさらそう思うんですけど。だから、とにかくの作品、お客さんがたくさん入ってくださることを願ってます。

右近 ありがとうございます。

猿之助 暑い7月ですからね。涼しい劇場でこの清涼剤となるような素敵な作品をご覧いただければと思いますし。何より、歌舞伎役者・尾上右近が初めて歌舞伎以外の演劇で洋服を着て芝居をするというのは、一生に一度しかないことですから。その歴史的瞬間に、ぜひ立ち会っていただきたいなと思います。

右近 いい体験をして、それを踏まえて、これからも役者としてお兄さんを追いかけていきたいと思います。ありがとうございました。

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舞台「ハングマン」高校生モニターの皆さんより感想到着!

明日5月16日(水)より、いよいよ東京公演が開幕する舞台「ハングマン」。

埼玉公演をいち早くご覧になった高校生モニターの皆さんより、沢山のご感想をお寄せいただきました。その第一弾をご紹介します!

高校演劇を頑張っている演劇部の皆さんのご感想なので、かなり見方が専門的!?そして、ネタバレ・後半の展開も含まれますので予めご了承ください。

東京公演をご覧になった方がどんな感想を持たれるのか、今からとても楽しみです!


伏線のはりかたがとてもうまくて見ていくたびにここはこうだったのか、とわかってとても面白かったです。動きや日常会話などがとても自然で本当にその人が立っているみたいでした。
声の高さの使い方も本当に勉強になりました。
場転や暗転中の音響もスっと入ってきて緊張感などを切らさずに見れました。
照明も時間帯が1発でわかるし、雨が降っているのか晴れてるのかもわかって本当に凄かったです。
さらに、暗転に切り替わる時に人に当ててるところを少し遅らせたりして魅せているのが綺麗でした。
大道具は、回ったり雨が降ったりなど驚くことばかりでした。高校生であれを作るのは難しいですが、少し真似してみることなどできるので、ぜひ真似してみたいです。(3年女子 Y・K)


今回、この舞台を見させていただけてとてもよかったです。役者さんの演技の自然さや、込められた感情がとても伝わりやすく感じられて一瞬で惹き込まれてしまいました。そして、舞台のセットもまさか回転するとは思わずとても興奮しました。作りがとても細かく、パブの床がいい感じに軋んだり、飲み物が本当に注がれていたり、雨が降っているときなどは一瞬息を飲むほど驚きました。音響の曲調も同じテイストでもその場面にとてもぴったりで、でも舞台を壊していない感じがとても好きでした。照明は、役者さんを見やすく当ててくださっていて暗転する際にメインキャストがほんの少し残ってから消えるのがとても好きでした。今回見させていただいた中で、音響、演技、照明、道具のすべてがとても勉強になりました。これを糧にさらに精進していければと思います。今回は素敵な舞台を見せていただきありがとうございました。(3年女子 I・N)


最初の死刑が執行されるシーンの心が苦しくなる演技で、私の心はグッと引き込まれました。そしてシーンが変わり舞台のセットが回った時の感動と言ったら、今でも忘れられません。身を乗り出して、思わず「わぁ・・・」と声が出てしまいました。バブのセットは、一度いろんな角度で、願わくば近くで見てみたかったです。特にソファの部分、直角のはずの間取りなのに鈍角に造られていて、そこまで考えて造るんだなと大変勉強になりました。2階へ上がる部分も見やすく造られていました。窓の汚しもすごいなぁと見ていました。雨の時のあれはどうなっているのかと考えたら夜も眠れません。あと回る度にパブの裏のセットが変わっていて、物音も聞こえずどうやっているのでしょうか。本当に凄かったです。あそこまで大掛かりなセットは高校演劇では作れないので、1回作ってみたいと憧れます。
今回の劇で好きなところは、ムーニーが首を締められるところです。ほんとうは締まってないとわかってるのに、あぁ死んじゃう、苦しそう、大丈夫かなと、すごくハラハラしました。息が出来なくて声が出なくなっているところなんか、思い出しただけで喉の辺りがきゅうっとなり胃がグッと締め付けられます。それからムーニーの豹変ぶりに、大変怖くなりました。休憩時間に部員と、こぇー・・・と言い合っていました。休憩が終わり劇が再開するとムーニーの掴めないところにまた怖くなりました。シャーリー役の富田さんは自分達と同年代で今回が初舞台で、でも声量も凄いし上手だし、自分も頑張ろうと思いました。
今回学んだことを糧に、これからも精進していきたいと思います。御招待して下さりありがとうございました。(2年女子 I・Y)


様々な視点から学ぶべき所が多く、とても貴重な3時間でありました。
シリアスな内容の台本にも関わらず、笑いを取るところはしっかりと取られていて劇のメリハリがしっかりしているなぁと感じました。
1番印象に残っているのは、やはりシャーリーを誘拐した疑いをかけられていたムーニーの豹変ぶりです。あんなにも優しそうに話していた男が急に雄叫びをあげるように声を大きくしているのを見て、鳥肌がたちました。
最後になりましたが、僕たちも演劇部として、この「ハングマン」から見習うべきところをしっかりと見習い、少しでもプロに近づけるよう日々精進してまいります。本日はありがとうございました。(2年男子 H・H)


「ハングマン」を見て最初に思ったこと、それはとても単純で、「かっこいい!」でした!
今までテレビ越しに見ていた俳優さんを生で、それも彩の国さいたま芸術劇場で見られて本当に感動しました。舞台が始まってからは、役者さんに釘付けでした。間の取り方とか、セリフの言い方、とても勉強になりました!中でもハリー、アリス、シャーリーの親子の会話や、常連客との絡み、ムーニーを殺してしまうシーン、ピアポイントがパブに訪れるシーンは、目が離せませんでした。それに加え、大道具小道具が本当に凄くて、驚きました。パブのビールを注ぐやつとか、ドアの鍵、窓、ムーニーとシドのシーンの窓など細かいところまで凄くて見ていて楽しかったです。
音響と照明に関して、音は、音量も曲のセンスも好きでした。特にF.Oなど綺麗で良かったです。照明さんは、ハリーとシドの取材シーン、役者が動く度に照明が合っていてかっこいいなと思いながら見ていました。ムーニーとシドのシーンの時の雷も凄くかっこよくて好きでした。
今回、「ハングマン」を見させて頂き、とても勉強になりました。今後演劇をするにあたって舞台の使い方など、参考にしたいなと思いました。(2年女子 K・M)


私は高校演劇をやっている身で、この彩の国さいたま芸術劇場にも1度立たせて頂いたことがあるので、尚更伝わってくる凄さがありました。
先ず驚かされたのは高校演劇では再現出来ない舞台装置。特に驚いたのは、セットごと回転して素早く場転できるシステムです。1度ならず何箇所にもなる装置に度肝を抜かれました。そして、窓の汚し、直角ではなく少し開かれた全体が観やすい構造にプロの技を感じました。
また、それに合わせた照明の再現度はとても勉強になりました。昼間と夜間で光の方角が違ったり、鉄格子の影を写すことで観やすくかつ監獄を表現したり、すごく計算されているなと思いました。
そして、役者の発声も重厚感があり聞いていて聞き取りやすさと貫禄がありました。キャラに合わせた声質と仕草も様々で観ていてとても楽しかったです。シャーリー役の富田望生さんは、私とほとんど変わらない年齢にも関わらず、堂々たる演技に感動させられました。
どの役者さんも素晴らしいですが、私一番の推しはムーニーです。シャーリーとの会話の優しくも怪し気な感じと首吊りの喘ぎ声に心奪われました。
プロの演劇は、やはり感激の連続で時が過ぎるのが速かったです。今後芝居をするにあたって良い刺激になりました。このような機会を頂けて大変感謝しております。ありがとうございました。(2年女子 A・K)


このたびは招待していただき本当にありがとうございました。やはりプロの公演からは学ぶことがとてもたくさんありました。演技はもちろんのこと、舞台装置や照明、音響、すべてがハイクオリティで圧倒されました。
演技面で凄いと思ったことは二つあります。一つ目は首を吊られるシーンのリアルさです。本当に死んでしまうのではないかとヒヤヒヤするほどリアルな演技でした。二つ目は舞台装置が回っている間や照明が転換する間でもしっかり演技を続けていたことです。場転の間もその人の生活は続いているんだなあ、と思いました。
音響や照明も素晴らしく、選曲のセンスも素晴らしく、全ての曲が心に刺さってきました。これらを全部含めての「ハングマン」なんだなあと思いました。
とても楽しくて学ぶことがたくさんありました。ありがとうございました!(2年女子 N・H)


客席についた時に舞台装置を見ただけでこの劇は絶対に一筋縄ではいかないだろうと思いました。最初の場面の、罪人が冤罪を主張するが、聞き入れてもらえず、処刑される演技、演出で一気に惹き込まれました。回転する舞台装置、雨の表現、役者の演技力など細部まで凝っていて、圧倒されました。またこのような機会があればぜひ見に行きたいです。(2年女子 W・S)


今回プロの演劇を初めて観劇し、まず1番に高校の演劇とは違うと思ったのは、役者さんのテンポの良さです。話の受け答えがとても自然で、劇の世界観に引き込まれるのがとても早かったです。そして、とにかく声が大きくて、早口のセリフも滑舌がよく聞き取れないところが見つかりませんでした。焦っている場面でも、セリフはしっかり聞こえて、でも焦りを感じさせられ、すごいと思いました。大げさに感情を顔で表現していたところも、高校生との差を感じました。そして、音響がすごく大きいのも驚きました。特に私が注目したのは雨の音で、ただ単に小さい雨の音ではなく、室内で聞こえる雨の音だったのですごくリアルでこだわりを感じました。これらの学んだことは、今後の演劇に取り入れられるところが沢山あると思うので、より良くしていきたいです。(1年女子 K・A)


PARCO STAGEのスマホアプリ「パルステ!」では、さらにパルステ!観劇レポーターの皆さんの感想も掲載中です。(TOPメニューの「HOT」よりご覧ください)

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またレポートが届きましたらご紹介させていただきます。

舞台「ハングマン」これからご覧になる皆様、どうぞご期待ください!

【ぴあ×パルコステージ特別企画『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』尾上右近密着取材vol.2】尾上右近×G2対談

『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』で、現代劇に初挑戦する歌舞伎界の新鋭・尾上右近さんに密着するこの企画。第2回目は、翻訳・演出を手がけるG2さんとの初顔合わせの場に伺いました!

 2012年にピューリッツァー賞戯曲部門を受賞し、これが日本初上演となる今作を、自ら演出したいと手を挙げたG2さん。薬物中毒から、苦しみつつも同じ境遇の人々とつながり、立ち直っていこうともがく人々の姿を、どう描こうとしているのでしょうか。

 第1回のインタビューでは、G2さんが作・演出した新作歌舞伎に感銘を受けたと語っていた右近さん。初対面とあって少々緊張気味だったものの、G2さんの意図するところを貪欲に吸収しようとする姿が印象的でした。歌舞伎役者の右近さんが、イラク戦争帰りの青年エリオットをどう演じることになるのか。ふたりの対話をぜひお楽しみください。

 また、今回は、エリオットの従姉ヤズミン・オルティスに注目しながら、簡単なストーリーを紹介します。第1回目のエリオットのストーリーも参照しながら、この作品の奥深さの一旦に触れていただけたらと思います。


■STORY■

プエルトリコ出身で現在はフィラデルフィアで暮らしているヤズミン・オルティス(南沢奈央)。音楽の非常勤教授として大学に勤めて1年目で、私生活では離婚問題を抱えていた。従弟のエリオット(尾上右近)には離婚を反対されているが、夫との関係はもう修復しようがないと感じている。そんな人生の岐路にあるとき、ヤズミンとエリオットの伯母であり、エリオットにとっては育ての母でもあるジニーが亡くなった。ふたりは葬儀の準備をし、遺灰を撒くためにプエルトリコに行く約束をする。その頃、エリオットの実の母親でドラッグ中毒者のサイトを運営しているオデッサ(篠井英介)の周りでも、ネットでつながっていた人間たちが動き始めていた。人々はやがて、ヤズミンやエリオットとも交錯していくことに。そして他者とのつながりが、それぞれの葛藤に光を差していく。


 ■尾上右近×G2対談■

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G2 それにしても(現代劇初出演で)大変なものに出ることになりましたね。

右近 その大変さもあまり把握できていないぐらい、何もわからない状態です(笑)。これまで本当に歌舞伎ばかりだったので、とにかくいろいろ教えていただきながら、ぶつかっていきたいと思っているんですけど。G2さんを信じて。

G2 ありがとうございます。ほかのキャストの方々も、最近は同じ人とばかりやることにならないようにと自分でリクエストしないようにしてるんですけど、結果、僕のやり方をよくわかっている人たちが揃ってしまったので(笑)。安心してやっていただけるんじゃないかと思います。

右近 はい。楽しみです。

G2 最初にプロデューサーから右近さんはどうかという提案を聞いたときに、和の右近さんが翻訳ものを演じるのは逆に面白いかもしれないと思ったんです。海外の作品をやるとき、僕はそれをそのまま再現するっていうやり方が好きではなくて、外国人にならなくていいよと言うことが多いんですけど。歌舞伎役者としての感覚を持ち込んで、右近さんがいつも通りにやったらどうなるのかっていうのも、面白いんじゃないかと思うんですね。しかも今回は、歌舞伎の外で女方をやり続けている篠井英介さんに、右近さんのお母さん役をやってもらうので。そのへんの関係も面白いし、日本のプロジェクトでないとできない空気感が作れそうな気がしているんですね。

右近 今のお話を聞いて、自分が経験してきたことを楽しみにしてくださっているというのは、ちょっと救われました。

G2 ただ、イラク戦争に行ってトラウマを持って帰ってきているという状況は、勉強することも必要になると思いますけど。でも、登場人物たちの迷いや悩みは、日本人が心に抱えていることとあまり変わりない気がしますし。作品が根本的に持っているエッセンスみたいなものは、今の日本人が見ても共感できるんじゃないかと思うんです。セリフのセンスもすごくいいですしね。日本人が見てもグッとくるものにしようと思っています。

右近 現に、登場人物のなかに日本人がいるので、ホッとする感じもありますよね。

G2 日本人のことを書いてくれてありがとうっていう気持ちになっちゃうんですよね(笑)。

右近 作品のなかでも、プエルトリコ人や日本人がいて、環境とか背景は違っても、インターネットを通じてそれぞれが共感したり、思いやりを持ったりすることができるっていうことが描かれているので。それがドラッグっていう問題を介して描かれてはいますけど、どこの国でも誰にでも共通する普遍的なテーマの話だなと思います。ただ、登場人物がそれぞれいろんな場所にいて、それぞれの場面にどんどん飛んでいくじゃないですか。それを舞台ではどう再現していくのか、すごく気になっています。

G2 場面が飛ぶのは、僕はわりと得意だし好きなんです(笑)。そのほうがお客さんの想像力を引き出しやすいというか。さっきまでアメリカでの話だったのが、違う人がひとりそこに立つだけで北海道に思えてくるようになると(劇中に北海道も登場します!)、表現の方法が面白くなるので。でも、今回難しいなと思っていることもあるんです。ひとつは、インターネット上で文字で会話している世界をどう表現するかということ。それから、この戯曲は、大きな起承転結の流れがないんです。それでいて不思議と最後には気持ちが浄化されていくようなカタルシスがある。それを今までの型を使わないで実現しているのが面白いなと思っているんですけど、その分演出は難しいだろうなと思っているんですね。そして、有色人種と白人と日本人がいて、人種の不協和音があるっていうことが、アメリカで上演するときはビジュアルだけでパッとわかるんだけど、日本人が演じる場合には人種と言われても……っていう感じがある。この3つをどうするか、稽古までに答えは出てないと思うので、そこはみんなで考えていきましょう(笑)。たぶん稽古場でいろいろ見つかると思うんです。

右近 現代劇の稽古はどう進めていくのかっていうのも、気になっていました。

G2 歌舞伎の世界って、ある意味、今の日本の一般演劇よりも、役者の責任が大きいですよね。衣裳とか鬘といった自分にまつわることは自分でやるし、古典だともともとのやり方を自分で学ばなきゃいけないし。新作歌舞伎でも、数人で掛け合う芝居に勝手に三味線が入ってきたりする(笑)。

右近 あ、そうだ。勝手にやってますね(笑)。

G2 だから、そうやって培ってきたものものは、全部出してもらっていいんじゃないかと思ってるんです。

右近 歌舞伎では、自分の感覚とか表現っていうものをそのまま舞台に持ち出せるものではないので、今回初めて、自分の考えをぶつけてもいいっていう環境に行けるのが楽しみではあるんですけど。でも確かに、何かアイデアを出すにしても、結局、歌舞伎のあの感じを現代的にすると……っていうふうに考えてしまいそうです(笑)。

G2 だから、「ちょっとそれはどうだろう」ってびっくりする瞬間が何度かあると面白いかもしれませんね(笑)。そこから何か生まれるっていうことが絶対あると思うので。でも、稽古が始まるまでに考えすぎないでほしいなとは思います。セリフも自分の解釈を入れて覚えてしまうと、相手の芝居によって変えられなくなっちゃいますし。だいたい腹七分とか八分くらい準備して、稽古場でみんなが集まったときにひらめくものを集積していくことで、できあがっていく。だから1ヶ月稽古する意味があるんですよね。

右近 さっきG2さんが起承転結のない戯曲だという話をされましたけど、僕がこの台本を読んだときの第一印象もまさに同じで、あまり劇的じゃないというか、日常のなかにある些細な起承転結をそのまま舞台にするような作品だなと思ったんです。だからこそ、相手のセリフをちゃんと聞きながら、微妙な心の動きを表現することがより大切になるだろうなと思いますし。僕もそこを大事にして演じたいなと思います。

G2 今回の東京公演の劇場は、ちょっとしたニュアンスもちゃんと伝わるサイズで、僕はそういう劇場が好きなんですけど。逆に言うとニュアンスが欠如すると味わいのない空間になってしまうので、やっぱりすごく繊細に演じていかなきゃいけないんですよね。ある人が言ったひと言ひと言が、ほかの登場人物にどういう影響を与えて、どういう波紋が起き、広がっていくか。チラシのデザインもまさに波紋がイメージされてていいなと思ってるんですけど、一人ひとりが作り出す波紋をほかの人が受け取るっていうリレーションを意識して作っていくと、すごく面白い芝居になっていくと思います。

右近 だったらなおのこと、相手の芝居を受けることを大事にしなきゃいけないですね。歌舞伎もセリフを聞きなさいと言われるんですけど、歌舞伎の場合は、聞いても動いちゃいけないので(笑)、どう受け取ってどう反応するのか、現代劇でそこにチャレンジできるのも楽しみなんです。なんだか今日は、僕のほうがお聞きするばかりになって申し訳なかったですけど、どういう心づもりでお稽古に臨んだらいいか見えてきて助かりました。

G2 いえいえ、とんでもない。

右近 本当にとにかくぶつかっていきたいと思っていますので、どうか受け止めていただいて、教えていただきたいと思います。

G2 一緒に何か考えていきましょうよ。

右近 よろしくお願いします!

【ぴあ×パルコステージ特別企画 『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』 尾上右近密着取材vol.1】 尾上右近インタビュー&スチール撮影レポート

歌舞伎界の新星であり、7代目・清元栄寿太夫を襲名したばかりの尾上右近さんが、「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」で満を持して「三足目のわらじ」となる現代劇に初挑戦! パルコステージブログでは、そんな尾上右近さんが初舞台を踏むまでの過程に密着。作品の魅力も存分に紹介しつつ、注目の若き才能がさらにステップアップしていく姿を読者の皆様にお届けします!


【『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル〜スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ〜』vol.1】尾上右近インタビュー&スチール撮影レポート

 

2012年のピューリッツァー賞戯曲部門賞受賞作『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』が日本初上演されます。邦題に“スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ”とサブタイトルをつけられたそれは、様々な問題を抱えた人たちが、それぞれに自分の人生を取り戻していく物語です。

 

戯曲を手がけたのは、ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』の脚本で知られるキアラ・アレグリア・ヒュディス。今作の上演を熱望したG2が、自ら翻訳し、演出を担当します。そして、主演に歌舞伎界の新鋭・尾上右近を据え、篠井英介、南沢奈央、葛山信吾、鈴木壮麻、村川絵梨、陰山泰、といった実力派が集結。珠玉の物語を紡いでいきます。まずは、そのストーリーをご紹介します。

 

 

 

■STORY

フィラデルフィアのサブウェイで働いているエリオット(尾上右近)は、25歳のプエルトリコ人。少し足を引きずっているのは、イラク戦争に出兵して負傷したためだ。戦場でのあるできごとによって身体ばかりか心にも傷を負い、帰還後はモルヒネ中毒にもなった。人生の目的を見失ったエリオットの良き理解者である従姉弟で大学の非常勤講師のヤズミンも、離婚調停中で人生に行き詰まっている。

そんなとき、育ての母であり伯母であるジニーが亡くなったことをきっかけにエリオットの周りの人間関係がつながり始めた。中心にいるのは、エリオットの実の母でドラッグ中毒者のサイトを運営しているオデッサ(篠井英介)だ。彼女自身も元中毒者で、そのためにかつて幼い娘を見殺しにした過去があるが、今は中毒にあえぐ人々を救おうとしているのである。そして、そのサイトに集まっている多種多様な人間たちにも、リアルな世界での関係が生まれていく。他者とつながりたいと願いながら、拒絶し、葛藤し、その末に新たな人生の行方を見つけていく人々。そのありようは、現代社会の光となり得るか!?

 

 

 

イラク戦争、ドラッグと、戯曲の背景に登場するのはアメリカ現代社会の闇です。しかし、登場人物たちが交わす会話は(主にネット上で)、今の日本に生きる私たちと無縁なものではありません。おまけに、実は日本人も日本も登場するという、親近感を覚えずにはいられない戯曲なのです。

 

PARCO STAGE BLOGではこれから、主演の尾上右近に密着。日本初上演となる本作の魅力をどんどん深掘りしていく予定です。

第1回の今回は、スチール撮影に臨んだ右近さんのインタビューと撮影風景レポートをお届けします!

右近さんは、朗読劇『ラヴ・レターズ』の経験はあるものの、現代劇に出演するのはこれが初めて。もちろん現代劇のスチール撮影も初体験です。しかしながら、昨年のスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』で市川猿之助の代役を見事にやり遂げた勘の良さと集中力を、ここでもいかんなく発揮!みるみる世界観を作り上げていった右近さんが演じるエリオット、早くも期待大です!

 

●スチール撮影風景レポート●

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スタジオに入ってまず撮影コンセプトの説明を受ける、真剣な表情の右近さん。

 

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白の衣裳から右近さんがイメージしたのは、白いキャンバス。「これから役と作品を自分たちで染め上げていくんだということを象徴しているような気がしました」。

 

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歌舞伎ではめったにない目線を外しての撮影も新鮮だったとか。「歌舞伎では拵えをして100%役になって撮りますが、今回は、役と素の自分が半分半分でカメラの前にいました」。

 

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スタッフから求められたのは苦しい表情とハッピーな表情。「スプーン1杯の幸せを表現してほしいと言われたのが難しかったですね。苦しいほうは実際に息を止めたので本当に苦しかったです(笑)」。

 

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いよいよメインの撮影に。イメージは水中に溺れるエリオット。「薬物に溺れ、トラウマに溺れ、抵抗できない感じを意識していました。ただ、やりながら思ったのは、自分の意志とは別に身体は生きようとするものだなということ。抵抗する力が自然と働くことを、手足の微妙な動きで表現してみました」。その身体の表現力で、どんな写真ができあがるのでしょうか。

 

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Nl1_9491s実際に水に濡れての撮影も待っていました。

メイク室で自らどんどん濡らしていく右近さん。

 

イメージに近づけていくスタッフに囲まれて、「みなさんのお考えに乗っかって自分がどう応えられるか。そのちょっとしたやりとりに面白さを感じました」という右近さん。「それがそのまま写真に映っている気がするので、お客様の目に届いたときに楽しみなお芝居だなと感じてもらえればうれしいです」。

 

続いて、作品と役について聞いてみました。

 

●尾上右近 インタビュー●

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──現代劇に初挑戦されますが、出演の話があったときはいかがでしたか。

「いずれは挑戦させていただきたいと思っていたのでうれしかったです。こんなに早いタイミングでというのは少し焦りましたが(笑)。でも、本当に歓喜の思いです」

 

──なぜ現代劇をやりたいと思われていたのでしょう。

「これまで歌舞伎だけを修行してきましたが、現代の役者としてもっといろいろなことを経験して、視野や幅を広げていきたいという気持ちが強かったからです。そのなかでも現代劇はぜひやってみたいことでした。歌舞伎は、衣裳、かつら、お化粧、小道具、大道具といったものによってデフォルメされた世界です。でも現代劇は、そういう演じるにあたって自分を守ってくれるものがないに等しいですから、そんななかでいかに役として存在できるのか。見当がつかないからこそ挑戦してみたかったんですね」

 

──しかも、現代劇のなかでもいきなり翻訳劇に挑戦することになりました。翻訳劇をご覧になったことはありましたか。

「何回かあります。歌舞伎にしか目を向けていなかった自分が、ここ2年ぐらい、現代劇、翻訳劇、ミュージカルと、本当にいろんなものに触れるようになって。いろんなものに興味を持ったり手を伸ばしたりするほど、自分自身がわかってくる感覚があるんです。自分に足りないものを思い知ったり、自分自身にどう向き合っているのかが見えてきたり」

 

──実際に演じてみると、さらにいろんなものが見えてきそうですね。

「はい。すごくハードルの高い挑戦になるとは思うんですけど。でも、その壁を打ち砕いていくぐらいのつもりでやりたいと思っています。基本的に僕は、大変なことが好きなタイプで、大変なほう大変なほうを選びたがるところがあるんです(笑)。それはたぶん、本当はすごく恥ずかしがり屋で小心者だからだと思うんですが。そんな自分ではダメだ、そんな自分を超えていきたいっていう気持ちが、大変なほうを選ぶ原動力になっているんじゃないかなと思います。だから今回も、不安を力に変えるということが出来ればいちばんいいなと思っています」

 

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──戯曲を読んだ感想はいかがですか。

「エリオットという役に関しては、彼も僕も25歳、年齢が一緒というところでまず捉えてみました。そうすると、エリオットにすごく共感できたんです。もちろん、イラク戦争の帰還兵であるとか、ドラッグ中毒であるとか、直面している問題は全然違いますけども。でも、いろんなことがわかりつつあるけれども、どうしていいかわからない部分もあるっていう、まだ思春期が尾を引いているようなこの年代ならではの悩みとか迷いとか戸惑いは僕にもあって。どんな時代でも、どんな場所でも、変わらず人間というものに常につきまとっているものが、テーマになっていると思いましたね」

 

──ともすればかけ離れた世界に見えますが、私たちの話でもあると。

「はい。みんな誰しも生きていくのは大変だと思うんです。その大変さの理由が、エリオットの場合はドラッグであったり戦争であったりするというだけで」

 

──歌舞伎でいろんな時代のいろんな人物を演じてこられたからこそ、その戯曲の核心が見えるのかもしれませんね。

「それはあるかもしれないですね。歌舞伎も結局最後に残るのは人の心ですから、無意識のうちに心というものに敏感になっているのかもしれません」

 

──翻訳と演出を手がけられるのはG2さんです。

「(取材時の3月9日の時点では)まだお目にかかっていないのですが、作品を拝見したことはあるんです。なかでも印象に残っているのは、作・演出をされた新作歌舞伎『東雲烏恋真似琴』(’11年8月歌舞伎座公演)。人形に魂が入るっていうようなお話を観ながら、やっぱり人の心についてすごく考えさせられた覚えがあります。社会がどれだけ発達しても人の心は発達しないのが面白いなと」

 

──苦しみというものもなくならないし。

「そして答えが出ない。だからこそ演劇というものがあるのだと思います。一旦日常を忘れてその世界に入り込み、そのうえで改めて描かれているメッセージを考える。それは歌舞伎でも現代劇でも変わらないことだと思うんです。だから、日常を忘れさせる世界を作って伝えるっていうことが、今回も大事になるんじゃないかなと思っています」

 

──実際、一旦観始めると没頭できそうな世界ですよね。

「そう思います。場面も場所もどんどん変わっていくんですけど、登場する人たちの心はつながり続けている。そのワールドワイドにつながっていく様が、速度といい、密度といい、すごく面白いと思います」

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次回の更新もどうぞお楽しみに!

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